「○○してもいい」A子さんを安心させた姉の意外なひと言~療育の現場から(小学生編②)~その④
「やなきもち はらがたつけど ふんばろう」という俳句で自分の正直な気持ちを表現し、その後笑顔になったA子さん。前回の記事~療育の現場から~その③で、気持ちの切り替えが苦手なA子さんの事例をご紹介しました。
そのA子さんには、いっしょにふらっぷ高陽を利用している2歳年上のB子さんという姉がいます。
■「失敗してもいい」と思えるそのわけは?
A子さんより半年早くふらっぷに来ていたB子さんは、ある時、落ち込んでいた妹にこんなことを話したそうです。
「ふらっぷでは、失敗してもいいんだよ。」
実は、B子さんも自分の気持ちを表現することが苦手で、みんなと一緒に活動できない日々が続き、よく泣いていました。
けれども、ふらっぷの療育プログラムのひとつ「ふらちゃれ(SEL)※」を通して、気持ちについていろいろなことを学ぶうちに、少しずつ「失敗することはダメなことじゃない」「気持ちに気づくことが大事」「自分は変われる」といった、新しい価値観が彼女の中に定着していったようです。
※ふらちゃれ(SEL):社会性と情動の学習
現在のB子さんの様子はというと、積極的に活動に参加できたかと思えば、何かのきっかけで気が乗らず、参加するのに時間がかかり、また気持ちを表出することが難しい場合があります。
A子さんの方も、早めに気持ちを切り替えられる日もあれば、なかなか切り替えられず、プログラムに参加できないまま終わってしまうという日もあります。
でも、A子さんもB子さんも「ふらっぷでは、失敗してもいいんだ」「ふらっぷでは、無理をしなくても大丈夫」という安心感があるので、「きょうはできなくても来週は…」と、翌週には元気に来てくれます。
■「失敗してもいい」から学ぶ力とは?
今まで彼女たちがセルフコントロールに失敗し自己嫌悪に陥った時、スタッフが常に寄り添い耳を傾け「よくがんばってるね」と受容し続けることで、自ら気持ちを立て直す、という経験を何度もしてきました。失敗しても、うまくいかなくても「何度でもやり直し」ができたのです。
人に受け入れられ気持ちを理解してもらえる、という経験の積み重ねは、自尊感情や自己受容感を高めるためにとても重要です。この感情が育っているなら、たとえ思い通りにならなくても、他の方法を考えたり、「まあいっか!」と思えたり、捉え方を変えることで視野が広くなったりするなど、行動の選択肢が広がります。そうすれば、たとえその時うまくいかなくても、何度でもやり直しできるのです。
さらに、ふらっぷの活動では、がんばっている自分を認め“自分で評価する”ということも行っています。ありのままの自分を受け入れることで、「耐える力」「前に進む力」も育ってくると思うのです。
この二人に限らず子どもたちは、「まあいっか!」と上手に気持ちを切り替えられるときも、「きょうはうまくいかなかったけど、また来週」と帰って行くときもあります。同じ道を何度も行ったり来たりしているようにみえるかもしれませんが、その足取りはゆっくりと確実に、前に進んでいるのです。
子ども達が少しずつ、自分を大切にすることができる人に成長してくれていることに、私たちスタッフは、日々大きな喜びと感動を実感しています。
担当:H
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この記事のシリーズ <スタッフHの~療育の現場から~> その①「オレが1番!」が口癖のAくんが、1番をゆずったわけ~療育の現場から~(幼児編)
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