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ふらっぷ高陽

不機嫌なだんまりA子さんが、気持ちを切り替えられた意外な方法とは?~療育の現場から~その③

<療育の現場から>と題し、年代別に療育の様子をご紹介しています。今回は、小学生編②として、小学生クラスの様子を「ふらちゃれ」での出来事を通してお伝えしたいと思います。


だんまりA子さんが、自分の気持ちに気づき表現した方法とは?

不機嫌そうな表情でふらっぷに来たA子さん。スタッフが話しかけても何も答えてくれません。(でも、話はちゃんと聞いています。)

パソコンを使用するzoom療育の時間になっても、場所を移動しようとしません。しばらくして、やっとパソコンの前に座ったA子さん。顔は無表情のまま、まだ一言もしゃべりません。(でも、何かを一生懸命考えているようです。)


やがて、zoomを使った《ふらちゃれ(SEL※)》が始まりました。

その日のテーマは「気持ちを俳句にしてみよう」。 ふだん自分が思っていることを五七五のことばで表してみようというプログラムです。 ※ふらちゃれ(SEL):社会性と情動の学習

    

う~ん…と考えている子供たちに、スタッフが声を掛けます。


 「どんなきもちでもいいよ。

  うれしいな とか、かなしいな とか、腹が立つ! とか、

  何でもいいよ。」


すると、A子さんの表情に変化が現れました。しばらく考えこんだ後、黙々とペンを走らせています。そして、見せてくれたボードには、このような俳句が書かれていました。


     『やなきもち はらがたつけど ふんばろう』


A子さんが正直な気持ちを表現してくれたことに感動し、「すごい!ちゃんと考える事ができたね」と伝えました。その時、何に腹が立ったのかを話すことはありませんでした。

しかし、その後は、いつものようによく笑う、明るいA子さんに戻って友だちと楽しくおしゃべりする姿を見ることができました。


気持ちの切り替えが苦手なA子さんが、すぐにニコニコになれたわけ

A子さんは、もともとこのように気持ちをすぐに切り替えられるお子さんではありません。むしろ気持ちの切り替えはとても苦手で、こだわりの強いタイプです。思い通りにならないと、貝のように心を閉ざし、黙り込んでしまう。自分が思っていることをことばで伝えることが難しく、困っていてもヘルプを出すこともできません。特に、失敗してしまったり、時間内に作業が終わらなかったりすると、なかなか立ち直れず、泣きながら帰ることもありました。


しかし、この日みんなに俳句を見せたあと、すっかり表情が変わり笑顔になったA子さん。いったい、どんな気持ちの変化が起きたのでしょうか?


 ・いやな気持ちになっている自分に気づいた

 ・いやな気持ちのままの自分を変えたいと思った

 ・気持ちをスッキリさせて、みんなと楽しく過ごしたいと思った

 ・声に出して気持ちを伝えられない時、文字で表すなど別の方法があることがわかった


直接本人に確かめたわけではないのですが、おそらく、このような思いや考えが『ふんばろう』という俳句に表れ、A子さんを笑顔にしたのではないかと思います。


『やなきもち』を受け入れたA子さんの変化の先にあるものは?

感覚や認知の偏りがあるお子さまは、ほかの子が感じる以上に心が過敏に反応し、疲れやすかったりしんどかったりします。

そんな子どもの「耐える力」の原動力のひとつが「自己受容感」だと、最近改めて感じています。言い換えると「ありのままの自分」を受け入れる、ということです。ふらっぷの活動の中で、“誰かに自分の気持ち(感情)を受け入れられる”という経験の積み重ねは、自己受容感を高めるためにとても重要です。

自己受容感が育っていけば、たとえ自分の思い通りにならないことがあっても、他の方法を考えたり、まあいっか!と思えたり、行動や考え方の選択肢が増えます。物事の捉え方が変わり、視野も広くなります。


  『やなきもち はらがたつけど ふんばろう』


ステキな俳句です。

自分の気持ちに気づいて表現し、誰か(スタッフ)に受け入れられたA子さんは、今まさに『ふんばろう』としている最中なのだろうと思います。


A子さんのように葛藤しつつも必死に耐え、前に進もうとする子ども達の健気な姿。私達スタッフの目には、いつもキラキラ輝いて見えます。


担当:H


★この記事のシリーズ <スタッフHの~療育の現場から~>

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