『君の存在は私の喜び』 ~療育の現場から~その⑤中高生クラス編(1)
こんにちは。スタッフHです。今回から中高生クラスの様子をお伝えしようと思います。第1回目は、今年3月にふらっぷを巣立っていった4人の卒業生のエピソードをご紹介します。
この4人は、ふらっぷ開所当初から5年間ずっと通ってくれた子ども達で、我々スタッフにとっても思い入れの深い、特別な存在。
そんな彼らが主役の『卒業生を送る会』は、忘れることのできない、感動的で素晴らしい時間となりました。
■自分の思いを、自分のことばで!
一人ひとりが友達や保護者、スタッフの前で、これまでのふらっぷでの歩みを振り返り、心に残ったこと、みんなに伝えたいことなどを発表しました。
ふだん人前で発表することがけっして得意ではない、また、あまり好きではない子も中にはいます。相当のプレッシャーや緊張感を抱えていたのではないかと心配していました。しかし、4人がそれぞれ、自分の思いを自分のことばで堂々と立派に語ってくれました。
はじめに深く深呼吸し、ゆっくりと丁寧に自分の成長を振り返り、また感謝の気持ちを表現してくれたAさん。
過去の自分の経験を思い出し、涙ぐみながらも素直な気持ちを伝え、自分らしく生きることの素晴らしさを伝えてくれたBさん。
恥ずかしがりながらも自分で考えたメッセージを最後まで声に出し、苦手だった人前での発表を見事にやり遂げることができたCさん。
これまで自分の置かれた境遇に葛藤を覚えつつも、その中で変わってきた自分を見つめ直し、後輩たちに良きアドバイスを送ってくれたDさん。
それぞれが、今の自分にできる最大限の力を出し切って、温かみのある、そして聞いている人の心に響くメッセージを伝えることができました。
■ふらっぷでも、しんどいことはあったよね…
彼らのことばをそばで聞いていた時、ふらっぷに来始めた頃のあどけない表情や、共に喜び、泣き、笑い、時にはお互いが納得するまで話し合った出来事が、次々と思い起こされました。
振り返ってみると、彼らがふらっぷで過ごした時間は良いことばかりとは言い切れないかもしれません。もしかしたら、苦痛と思われる時間も多少あったのではないかと思います。
人との向き合い方、関わり方がよくわからない。そんな自分とどう上手く付き合っていけばよいかもわからない。ふらっぷに来る子どもたちの多くが、このような悩みの中でしんどさを抱えたまま日々を過ごしています。
この4人の子どもたちも例外ではありませんでした。実際、ふらっぷの療育プログラム『ふらちゃれ(SEL:社会性と情動の学習)』では、感情に注目する事が苦手なため、途中で机の下に隠れたり、椅子に座ったまま眠ってしまうという事もありました。また、友達とのコミュニケーションがうまく取れず、気がつくとポツンと一人で過ごしている。そんな様子を見かけることも度々ありました。
■それでも辞めずに継続できた理由
しかし、この4人には共通する点がいくつかありました。
ひとつ目は、『継続の力』です。前述した通り、子どもたちにとってふらっぷはいつも楽しいことばかりではありません。しかし、ふらっぷで過ごすすべての時間は、成長するチャンスであり、やがて大人になっていく子どもたちに必要な経験の場となるのです。ここで言う継続とは、来たくない時無理に来させるということではありません。しんどい時はしんどい、やりたくない時はやりたくないといえること、つまり〝自分の口で伝えることが継続の始まり”になるということです。
4人の子どもたちは心身の調子を自覚し、無理をしないことで自分を大切にするということをPBIS(積極的な行動介入と支援)で学んできました。そして、その子どもたちの思いをお母さん方もしっかりと受け止めてくださいました。休むことはあってもやめたいと言ったことは、この4人から聞いたことはなかったように思います。
■ふらっぷとご家庭が、同じ目標を持つことの重要性
ふたつ目の共通点。それは、保護者の方のふらっぷに対する信頼です。
ふらっぷで大切にしていることは何か、SEL、PBISとはどういうものなのか、お母さんたちは積極的に保護者勉強会等に参加して下さり、理解しようと努力してくださいました。また、時には意見や質問も投げかけてくださいました。必要があれば面談をし、お子さんの課題やお母さんの悩みを共有してきました。
ふらっぷとご家庭が共通の理解を深め同じ目標を持って子どもたちに接していけることは、子ども自身にとって一番幸いなことではないかと思います。そのようなお母さん方の思いがあったからこそ、この4人の子どもたちは、楽しい時もそうではない時も、ふらっぷに通い続けることができたのではないかと思います。
■君の存在が 私たちの喜び!
いろんな思いをしながらもふらっぷに来続けることを選び、気がつくと、あの頼りなさそうに見えた、心細そうな様子だった子どもたちが、たくましく、力強くふらっぷをはばたいていく。自分の可能性に目を向け、泣いたり悩んだりしながらも未来への希望を見出すことができた4人。一緒に過ごしてきた時間の中に、何一つ無駄なものはなかった。この子たちに出会えて本当に良かった。そんな思いを抱かせてくれた、素敵な卒業生でした。
送る会の最後にスタッフ一同から歌のプレゼントをしました。曲名は『君は愛されるため生まれた』 その歌の中にこのような歌詞があります。
♪君の存在が私には どれほど大きな喜びでしょう
ふらっぷの子どもたち一人ひとりのありのままの姿、そして自分らしく成長していく姿は、今後も私達にとって、大いなる喜びです。
いかがでしたでしょうか。次回も中高生クラスの様子をお伝えする予定です。お楽しみに!
担当:H
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