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  • ふらっぷ高陽

<怒りの温度>が100からゼロになったわけ~療育の現場から~(小学生編①)

【ふらっぷのステキな仲間たち~療育の現場から~(小学生編①)】

前回の幼児編に続き、年代別に療育の様子をご紹介します。

今回は、小学生クラスの様子を『ふらちゃれ』での出来事を通してお伝えしたいと思います。『ふらちゃれ』とは、「ふらっぷチャレンジ」の略で、社会性と情動の学習(SEL※)を子ども達に親しみやすく学んで欲しいという思いから、ふらっぷ独自でネーミングをしたものです。


『ふらちゃれ』では、絵カードや動画などあらゆる視覚ツールを使って感情を読み取り、状況を理解します。また、時にはロールプレイなどを行いながら、当事者の立場に立って気持ちを想像し、望ましい行動や感情のコントロールを学びながら、社会性スキルを習得していきます。進め方はクラスによって様々です。たとえば、ある小学生のクラスでは・・・


Aくんの<怒りの温度>を見たBくんの提案とは?

ある日、すごくイライラした様子でふらっぷに来たAくん。「あー、もう腹が立つ!」と言いながら、トランポリンをひたすら跳んでいます。(トランポリンはイライラ解消法として子ども達に大人気です。)


「よっぽど腹が立つことがあったんだね。」

スタッフの言葉に応えるように、Aくんは<気持ちの温度計>を自分から見せてくれました。Aくんの怒りの温度は、なんと一番上の100度にまで達していました。


 *気持ちの温度計:自分の気持ち(喜び、悲しみ、怒り、不安など)の温度(大きさ)を、目に見える形で表したもの。時間の経過とともに、変化やその理由を考えながら自己理解を深めるために用います。


それをそばで見ていた同じクラスのBくん。「じゃあ、『ふらちゃれ』で話したらいいんじゃない?」と提案しました。実は、以前『ふらちゃれ』の時間で二人は意気投合し、自分の心の中だけで溜めていた気持ちをお互いに出し合った経験があったのです。そこで予定外ではありましたが、急きょ、『ふらちゃれ』をすることになりました。


『ふらちゃれ』後、<怒りの温度>はどうなった?

運動を終え室内に入るなり、ふらちゃれスタート。ジェスチャーを交えながら何があったかを説明するAくん。それを聞きながら、「僕も学校でこんなことがあったんだよ」と話すBくん。お互いの体験談に耳を傾け、共感し合いました。やがて終了時間になり、解決には至らなかったものの、ため込んでいた思いを出し切ったせいか、二人の表情はとてもスッキリした様子です。


改めて、Aくんに怒りの温度を聞くと、なんと“ゼロ”にまで下がっているではありませんか! 

「どうしてゼロになったの?」と尋ねると、「なんでかな? わからん。でも、スッキリした。」とのこと。

その後、帰るまでBくんと楽しそうにしているAくんの表情には、さっきまでのイライラはもうありませんでした。



『ふらちゃれ』で、大切なことは?

AくんとBくんは、誰に言われたわけでもなく、自分達で気持ちについて真剣に考え、学ぶことができました。これも『ふらちゃれ』です。

ふだんの『ふらちゃれ』では、スタッフ側でテーマを決めて話し合ったり、視覚ツールを用いたりすることが多いのですが、今回のように子ども達から自然発生的にテーマが生まれる場合もあります。

AくんやBくんのように、自分に起きた出来事や、その時感じた気持ちを「ふり返る」ことは、子ども達が自分を客観視するためにとても重要です。ここで大事なポイントは、その時抱いた気持ちを、“良い/悪い”とか、“正しい/正しくない”などと判断しないこと。あくまでも、気持ちについて“考えるプロセス”を尊重することです。

自他の感情を考えることから、やがて問題への向き合い方、解決方法が少しずつ見えてきます。そしてそれらが、相互理解を深めるきっかけにつながるのです。


これぞ、ふらっぷのSEL『ふらちゃれ』!

もちろん、温度計をつけたり、『ふらちゃれ』をしたりしたからと言って、すぐに納得できる答えが見つかるとは限りません。けれども、この経験の積み重ねにより、子ども達は自分の気持ちを受け止めてもらえた喜びを知ります。自分が受け入れられた、わかってもらえたと感じることができた子どもは、やがて、相手をわかろうとする(=相手を大切にする)ことを学びます。

このように自己受容(=自分は自分のままでいい)や、他者理解(=やさしさ、思いやり)が育まれる土台づくりをサポートする。それが、ふらっぷの『ふらちゃれ』なのです。


自分と向き合う中で、目には見えない心の動きや、自分も人も大切な存在ということに気付くチャンスに出会う。そんなステキな経験を生かし、成長していく子ども達を、これからも見守っていきたいと思います。


いかがでしたでしょうか。次回は小学生クラス第二弾をご紹介します。お楽しみに!


担当:H


※SELとは、Social and Emotional Larninngの略。社会性や感情のコントロールなど、対人関係構築スキルを自己理解、他者理解を深めながら身につけ、責任ある意思決定の力を育むこと。


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