子どもたちから学んだ『安心・安全』を求める想い
「ここまではできます。」
「わからないので教えてください。」
ふらっぷでは、自分の気持ちや状況を正直に伝えれば、スタッフがその思いを受け入れつつ、タイミングに応じて適切な対応をするようにしています。そうすることで、子どもたちはふらっぷが素の自分を出せる『安心・安全』な場所であると感じてくれるからです。
学校と同じように年度ごとにクラス替えを行っているふらっぷでは、4月から新しいクラスになり、子どもたちはドキドキのスタートを迎えました。初めてのことも多く緊張する場面もたくさんあるので、冒頭のように正直に気持ちを言うのは、子どもたちにとって勇気がいることです。
■「見ないでください」に友だちの反応は?
小4のAさんは、少し恥ずかしがり屋。今まで少人数のクラスにいましたが、4月からのクラスは人数が増えメンバーも変わりました。
みんなで自由に話をする「ふらと~く」の時間のこと。Aさんがふと
「私、見られると緊張するから、見ないでください。」
と発言しました。これまで自分から気持ちを発言することがあまりなかったAさんなので、スタッフはびっくり。
でも、もっと驚いたことがありました。周りにいた友だちが
「Aさんは、見られたらだめなんや。見んようにしよ。」
と椅子ごと動かしてAさんに背を向けたのです。そして、背を向けたままで代わるがわるAさんに話しかけ始めたのです。
Aさんは、みんなの行動に “自分が受け入れられた” と感じたのでしょう。その後ゲームをするときには、Aさんの顔に緊張感はなく、アハハと声を上げて笑う姿も見られました。友だちも「Aさん、先にやっていいよ」とゆずり合うなど、とても和やかなムードで過ごしました。
■子どもたち自身がなにより求めている『安心・安全』
注目を集める行動をとることで『安心・安全』を得ようとするタイプのお子さんもいます。
でも、Aさんの場合は、注目されないことが『安心・安全』でした。みんながAさんから目をそらしつつも、無視するのではなく適度に声をかけてくれたおしゃべりやゲームの時間は、Aさんにとってとても居心地の良い空間だったのです。
Aさんが「見ないでください」と言えたのも、今ここでなら素直に自分の気持ちを言っても安心・安全だ、という思いがあったからでしょう。
『安心・安全』を感じられる環境があることは、子どもたちにとって最も必要なことです。
今回の出来事から、私自身が気づかされたことがありました。それは、安心安全な場所を提供できるのは、保護者や支援者である大人だけでないということ。子どもたち自身が、ふらっぷを安心して過ごせる場所、安全な場所にしたいと意識し、求めていたのです。それが、先ほどのAさんに対する態度となって表れたのでしょう。
それは、ふらっぷでの療育を通して培われたものかもしれませんし、子どもたちがもって生まれた性質なのかもしれません。また、保護者の方の関りから子どもたちが学んだことかもしれません。いずれにしろ、Aさんと子どもたちにとって、ふらっぷが『安心・安全』な居場所になっているということをとてもうれしく感じた出来事でした。
担当:S
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