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  • ふらっぷ高陽

ケンカっぱやかったB君を思いやりある青年に変えた支援方法とは?

更新日:2020年12月23日

《子どもの良い行動が増える方法》教えます!(4) こんにちは。ふらっぷ高陽のプログラム責任者、栗原慎二です。 ~~~~~~~~~~~~~~~ ふらっぷに行っててホント良かったよ! ふらっぷに来る前はすごくケンカっぱやかったけど、今は、思いやりの行動ができるっていう自信がある。思いやりの行動をしたら、スタッフがすぐにシールを貼ってくれたから、思いやりってどういうことか分かったんだ。ふらっぷに通って自分が別人みたいに変わったって思ってるし、友だちにも言われるよ!(卒業生Bくん) ~~~~~~~~~~~~~~~ Bくんの行動を変えた支援方法、それはPBIS(Positive Behavioral Interventions and Supports:ポジティブな行動介入と支援)です。 1回目はPBISについて、2回目3回目では、ふらっぷでの具体的なPBIS実践方法をご紹介してきました。4回目のテーマは《効果的なシールの貼り方について》です。

(○回目の文字をクリックすると、それぞれの記事にジャンプできます。) -------------------------------------------   【ふらっぷでのPBIS実践方法】part3 ------------------------------------------- その場でほめると分かりやすい

グッジョブカード
グッジョブカード
グッジョブシール
グッジョブシール

B君が「すぐにシールを貼ってくれたから分かった。」と言っているように、子どもは、行動をしたすぐその場で褒められると理解しやすく印象に残りやすいようです。 発達凸凹のお子さんはワーキングメモリー(※)が弱い場合もあるので、時間が経ってから言われても「え?何のこと?」となってしまうことはめずらしくありません。  

 ※ワーキングメモリー:作業や動作に必要な情報を一時的に記憶、処理する能力のこと

《例 ①》 小学4年生のAちゃんは、隣の席のCちゃんが、自分で落としてばらまいてしまった色鉛筆を拾っているのを見て、「手伝うよ。」と一緒に拾い始めました。それに気づいたスタッフが「Aちゃんやさしいね。それは思いやりだよ。」と言い、その場でAちゃんのグッジョブカードに赤い思いやりシールを貼りました。

Aちゃんは、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)の診断を受けているお子さんなので、学校で「思いやりのある行動をしましょう。」と教えられても、どうしたらいいのかさっぱり分かりませんでした。 でも、良い行いをした時、その場で「それは思いやりだよ。」と教えられると、「これが思いやりっていうんだ。」と具体的に理解でき、見える形で赤いシールが貼られるのが嬉しくて、「また、思いやりの行動をしてほめられよう。」と考え、良い行動が定着していきます。 すぐその場でほめることを《即時強化》、その行動が思いやりなんだと行動の価値を教えることを《行動の価値づけ》と言います。 周囲の子ども達にも影響を与える 相手のCちゃんや、Aちゃんがスタッフに褒められるのをそばで見ていたDくんも、Aちゃんの行動が良いモデルとなり「これが思いやりっていうんだ。自分もやってほめてもらおう。」と、思いやりの行動が連鎖していくのです。これは、グループ療育の良さであるといえるでしょう。 少し後に、じっくり振り返るとさらに効果的 さきほどご紹介した《行動の価値づけ》は、『行動が起きたその場ですぐ行動の価値を教える』やり方のほかに、『少し後にじっくり振り返る』やり方があります。じっくり振り返ることで、子どもは〈自己理解〉〈他者理解〉〈自尊感情〉などさまざまな力を伸ばしていくことができます。 《例 ②》 療育最後の振り返りの時間に、先ほどの思いやりシールについて、スタッフとAちゃんがこんなやりとりをしました。(Sはスタッフ、AはAちゃんの言葉)  S 「Aちゃんは、どうしてCちゃんの鉛筆を拾ってあげようと思ったの?」  A 「だって、なんか悲しそうだったから。」  S 「どうして悲しそうって思ったの?」  A 「泣きそうな顔してた。ちょっと涙が出てたみたい。」  S 「Cちゃんの顔を見たら気持ちが分かったんだね。よく気づいたね。」  A 「たぶん大事な色鉛筆なんだよ。芯が折れちゃって悲しかったんじゃないかな。」  S 「悲しい気持ちの理由まで考えてあげてたんだね。すごいなあ。拾ってあげたらCちゃんどんな顔になった?」  A 「なんかニコッてしたよ。で、“ありがとう”っていってくれたから、私もうれしくなったんだ。」  S 「思いやりの行動って相手が喜ぶだけじゃないんだね。」  A 「うん。思いやりって、相手も自分も嬉しくなるんだって思ったよ。」  S 「相手の表情を見て気持ちが分かるAちゃんは、想像力があるね。それに悲しそうって気づいただけじゃなくて、鉛筆を拾うって行動をしたのがすごいなって思ったよ。Aちゃんは、思いやりと行動力、それに想像力がある人だなあって思いました。すばらしいなあ!」 3分ほどの会話です。スタッフの質問に答えることで、Aちゃんは自分のした行動を客観的に振り返り、いろいろなことに気づいていきます。   ●自分は、Cちゃんの表情を見て気持ちを想像していたこと   ●気持ちに気づくだけじゃなくて、拾うという行動ができたこと   ●自分が鉛筆を拾うことで、Cちゃんは嬉しい気持ちになったこと   ●「ありがとう」って言葉には、嬉しい気持ちがこもっていたこと   ●思いやりの行動は、相手が嬉しくなるだけではなくて、自分も嬉しい気持ちになること   ●スタッフは自分の良いところをちゃんと見ていてくれる、自分は大事にされていること   ●自分には思いやり、想像力、行動力があること   ●自分は人の役に立つことのできる、価値のある人間であること PBISは、自尊感情を育てる まだ小学生のAちゃんの気づきは、こんな風に文章にすることはできない漠然としたものかも知れませんが、このようなやりとりを繰り返していくことで、価値のある行動が定着するだけでなく、自分の存在価値を確認し、自尊感情を育てていくことができるのです。 冒頭の卒業生B君が、「以前とは別人のように変わった。」と自己理解を深め、「今は思いやりの行動ができる自信がある。」と言い切れるまでに自尊感情が育ったのは、PBISの積み重ねによると言えるでしょう。 そのように、PBISは、子どもの良い行動が増え、自信を持って生きていく大人になるために、とても効果的な支援方法なのです。 ちなみにB君は、現在社会人として立派に働いています。彼の思いやりある行動が職場を和やかにし、皆に愛されて、自分らしく生きている姿はとても輝いて見えます。 3回に渡り、ふらっぷでのPBIS実践方法についてご紹介いたしましたが、いかがでしたか? どんな価値を教えるか、どんなご褒美で評価するかなどは、それぞれのご家庭で工夫していただければ良いと思います。一番大事なのは、『親子で楽しみながらやること』です。ぜひ、ご家庭でもPBISを取り入れてみてくださいね。 参考文献『PBIS実践マニュアル&実践集栗原慎二編』(ほんの森出版)

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