「ほんとうの【やさしさ】とは何か」を教えてくれる一冊
スタッフおすすめの書籍を紹介するシリーズ。今回は、ふらっぷの子どものステキなひとことからスタッフが思い出したあるお話し。葉祥明さんのやさしく美しい絵がとても印象的な絵本です。クリスマスが近いこの季節にもおすすめの物語です。
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こんにちは。ある日のふらっぷ療育でのエピソードです。
お気に入りの遊具をお友だちに貸してあげたAちゃん。
その理由を聞くと、「Bちゃんがうれしいって気持ちになると思ったから」と答えました。その言葉を聞いて私はある絵本を思い出しました。それが、今回ご紹介する『ゴンダールのやさしい光』という本です。
『ゴンダールのやさしい光』 日本語版 みなみ ななみ (著) 葉 祥明 (イラスト)
これは、海外で飢餓に苦しむ人々に食べ物を配る働きをするためエチオピアという国に渡った、一人の青年の実話です。
準備された食べ物が、集まってくる貧しい人々の数にはとても及びそうにもない状況の中、隣町から配給の知らせを聞いた二人の少女がやって来ます。しかし彼女たちは、ゴンダールの町の住民ではないという理由で追い返され、途方に暮れてしまいます。
青年は翌日、わずかな食べ物を持って少女たちを探し、ある人物の家にいることを知ります。その家を訪ねると二人はすでにおらず、家主である“ボロボロの服のおじさん”が出迎え、前夜、その家の家族と共に食事をし、二人の家族の分も彼女たちに持ち帰らせたというのです。けして十分とは言えない食べ物を分け与えた理由を聞くと、“ボロボロの服”の男性はこう答えました。
「私も食べ物をもらってうれしかった。あの子たちにもただ同じようにしただけだよ。」
それを聞いた青年の目に、男性の姿は、どんなに貧しくても朝の光のようにまぶしく美しく映ったのでした。
■おじいさんの「幸せ」
人はみな、幸せを求めて生きています。幸せになるために、嬉しい、楽しい、元気になれることを多く感じていたいと願います。そのために、自分のしたいことをする、して欲しいことをしてもらう、などと考えるのは普通であり当然の欲求です。しかしこの物語の“ボロボロの服のおじさん”にとっての幸せは、それらを超えていました。彼の幸せは、【自分にとって嬉しいことを他の人にもわけてあげる】ことだったのです。
特別な理由はありません。ただ同じように。当たり前のように。それが彼の喜びなのです。
■本当の「やさしさ」
私は子どもの頃、自分がされて嫌なことは人にしないように、という道徳を学びましたが、この物語の価値観とは似ているようで違います。人との関係性を学ぶ上ではどちらも間違ってはいませんが、この物語で描かれている<自分にされてうれしいことを他の人にもという視点は、私たち人間の本質である【やさしさ】とは何かを表しているように思います。
『損得勘定』『自己中心』『勝ち組・負け組』という価値観が優先されがちな現代社会の中で、それでもなお、【やさしさ】を求めたり与えたりすることができるのは、私たちの本質がそこにあるからなのではないでしょうか。
冒頭のふらっぷでのエピソード。Aちゃんが友だちにした行為やことばの中に、私は、この物語の登場人物と同じぬくもりを感じました。Aちゃんのやさしさ=思いやりの気持ちは、誰もが持っている本質であり、ふらっぷで大切にしているめあての一つとして、多くの子ども達の中にも育まれています。
幸せや喜びを、自分のそばにいる誰かとともに分かち合う。それが当たり前になった時、このお話の最後に書かれているように、『苦しみや悲しみは今よりずっと少なくなる』。そんな世界になることを、子どもたちと共に願いながら生きていきたいと思います。
なお、この本は絶版となっています。ふらっぷの保護者用貸出本棚にありますので、読んでみたい方は是非ご利用ください。(ご遠慮なく、スタッフに声をかけてください!)
担当:H
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